epilogue ~甘い未来~

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「それならばどうして麻倉はこっちに残ることにしたの?」 「支社に来て、千石さんや三浦さんをはじめ、様々なお客様に出会って、少しずつ考えが変わりました。彼らはみんなここを愛し、誇りを持っている。自分の生まれ育った場所をもっと良くしようと常に考えている。それに比べて私は、仕事をするにしてもずっと自分のことしか考えてこなかったな、って思ったんです」  学生の頃から上昇志向が強く、地方で生まれ育ったことをどこかコンプレックスに感じていた私は、東京で、大企業の本社で働くということに強いこだわりを持っていた。 「色々な人たちとの出会いがあって、私ももう少しここで頑張ってみたいって思うようになったんです。私も、自分が生まれ育ったところのために、何かしたいなって」  そう話す私に、課長は柔らかく微笑んだ。目尻に浮かぶ皺に、懐かしさが込み上げる。
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