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素直に頷けずにいる私を置いて、夏希さんは画廊の奥へと消えた。数分の間を空けて戻って来た彼女が手にしていたのは、一冊の画集だった。
「……これは?」
「和史が以前出した画集よ。見てみて」
手渡された画集のページをおそるおそる捲る。中表紙の次に私の目に飛び込んできたのは、桜舞う春の日差しの下で幸せそうに笑う日菜子さんの姿だった。
その画集は、全てのページに様々な表情を見せる日菜子さんが描かれていた。
慈愛に満ちた笑顔、憂いた表情、涙。三浦さんの手によって切り取られた彼女の時間はそれぞれだけど、一貫して絵から伝わってくるものがある。
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