4人が本棚に入れています
本棚に追加
場面変わって和かな光射す竹林の中。対峙するのは蒼北桜志と男鹿田雷蔵。
桜志はあくまで微笑んだまま、居合いの構えをとりつつ言った。
「男鹿田さん。実は僕、前からあんたの事が嫌いだったんだ」
「気が合うじゃねぇか。俺も前からてめぇの小便臭え面を見るたび虫酸が走ってたところだ」
爬虫類のような目で桜志を睨み、同じく居合いの構えをとる雷蔵。
「それならもう二度と見れないようにしてあげますね」
「俺が見てえのはただひとつ。苦痛に歪んだてめぇの死に顔だ」
草履の擦れる音と共に、少しずつ両者の距離が狭まっていく。やがてその爪先が、互いの間合いに触れた。
刹那、ほぼ同時に抜刀。空気を切り裂く鋭い音が互いの耳に届く。
直後、両者の間にあった竹が滑り落ちるように切断され、桜志の頬に一筋の切り傷が走る。直後、その傷を与えた刀の切っ先が地面に突き刺さった。
柄を握り締めた右手首が、だらりとぶら下がったまま。
「がはっ……」
それが自身の物だと認知すると同時に、雷蔵は血を吐き、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
宿敵の死に様を見届けると、桜志は慣れた手つきで刀を鞘に収めた。
「男鹿田さんの分も乙姉を幸せにするよ。ああ、男鹿田さんじゃ乙姉を幸せにできなかったから大して変わらないね」
無邪気な笑い声を上げ、桜志は雷蔵だったものに背を向けその場を立ち去った。
最初のコメントを投稿しよう!