第2章

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「可憐。 昨日は何時に帰ってきたの? 12時までは私も待っていたけど、会社の飲み会ってそんなに遅くなるものなの? 終電もない時間だったわよね、どうやって帰ってきたの?」 矢継ぎ早の母の質問は、 ろくに寝られずこれ以上落ちることはないと思える程沈んでいた私に、底はまだその先にあるのだと教えてくれた。 私は呼吸が浅くなってくるのを感じた。 「ごめんなさい、お母さん。 遅くなっちゃったからタクシーで来たの。 前に話したことのある、 川口さんと児玉さんっていう女性もいたのよ」 気持ちとは裏腹に、 穏やかな口調と微笑みを見せて母を安心させようとするのは、 これ以上の攻撃を避けるための防衛本能で、 これまでに培われた経験の賜物だ。 「あら……そうなの。 遅くなるって連絡はくれてたけれど、 こんなに遅くなるならもう1度くらい連絡入れてね、今度からは」
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