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「夢の国……勘弁しろよ。大人の男が2人で行くところかよ」
車に乗ってからもまだ征司はごねていた。
「往生際が悪いですよ。見て、お城が見えてきた」
「……人が凄い」
「それは夢の国が楽しい証拠」
「悪いことは言わない。考え直したらどうだ?おまえが望むならほら、今から香港まで飛んでディナーを食べてもいい。あるいはそうだな、新しい服を買いに行かないか?上から下まで何でも好きな物を買ってやる」
こんなにやさしい王様は初めて。
それでも僕は首を横に振った。
「結構です。あそこへ行けば空飛ぶ絨毯にも乗れるし、ショッピングモールで可愛いお土産をたくさん買えるもの」
「チッ……どうしても俺を夢の国へ連れて行くつもりか」
乱暴に車線変更しながら
征司は溜息交じりの舌打ちをする。
「いいえ。お兄様が僕を夢の国に連れて行くの。そこんとこ、間違えないで」
不貞腐れる頬にひとつキスすると
夢の国の駐車場が見えてきた。
「やれやれ……」
可愛い制服のパーキング係が満面の笑みで僕らの車を誘導する。
「ふふ、もう逃げられないね、お兄様――」
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