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征司はカチューシャをつけた僕をじっと見つめると
分かりやすい――かすかに頬を染めた。
「今……なかなか可愛いと思ったでしょう?」
「だ、誰がっ!」
「素直になりましょうよ。はい、お兄様の分」
僕が再び
ねずみのカチューシャを被せようと試みると
「いや、待て!」
往生際の悪い王様。
それをなんとか両手で制して言った。
「俺がやるからには――もっとふさわしいものでないといけない。いいか?俺は天宮家の当主だ。分かってるな?そんなものを被るわけにはいかないんだ」
「……だったらどうするおつもりですか?」
「そうだな」
征司は胸元の細いタイに手をやると
咳払いして神経質そうにあたりを一瞥した。
そして
「よし、あれならいい――」
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