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僕は集中して回転するコインを見つめる。
動体視力は猫なみに良いんだ。
「あ」
「ふふん」
だけど勝負事に負けるのが何より嫌いなお兄様は
落下を待たずして意地悪く空中でコインを手の中に収めてしまう。
「さ、裏か表か」
勝ったって顔してるな――。
「裏です」
「いいのか?」
「ええ」
「本当にいいんだな?」
たとえ間違っていたって
僕には何の損もないんだと思うと気が楽だった。
それで――。
「いいから早く見せて下さいよ」
僕は席を立つと
勢いよく征司の隣へ飛び移った。
「あ……」
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