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 重たい頭を上げると、ジャラリと金属が擦れた音が鳴る。  耳たぶに刺された直径一センチの杭に一回り細い鎖が付けられ、背中を通り反対側の耳に繋がっている。先程の擦れた音は、背中の上をこの鎖のピアスが滑ったものだ。  だが、これを装飾具(ピアス)と呼んでいいものなのか。いいや、呼べないだろう。身を飾るものにしては異様だ、所々が錆びつき黒ずんでいる。  ヒューレシアはこれを着けられてから六年が経つ。その六年は短いようでとても長く、地獄のような日々だった。  ある日奴隷としてある貴族の家へと連れられたヒューレシアは、そこの主人に奴隷の証――この鎖を耳に着けられた。身体を押さえつけられ、耳朶に杭を打たれたあの痛みはとても忘れられそうにない。     
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