■扉の勇者と大槍の騎士とか大槌の戦士とか

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■扉の勇者と大槍の騎士とか大槌の戦士とか

 大きく深呼吸をして、頭をクリアにした。  周辺の魔物を一掃し、今は落ち着いているとは言え、とても油断はできない。  手短に準備を整えなければならない。じいさんの始末は後回しだ。 「次はお前だ、鎧を着ろ」 「必要ありません、お引取りを」  かろうじて、大事な部分を紋章で隠し、身の丈を超える大槍をかついだ男が、涼しげな顔で即答した。  偽の回復薬を売って回る詐欺師を追い返すかのごとき、丁寧かつ毅然とした態度だ。実に腹が立つ。  大体、ソコについたソレはどうなっている。何故、どこにも支えが無いのに落ちたりずれたりしないのだ。 「僕の紋章が気になって仕方ないようですね。どうです、貴方も真実の扉を叩いてみては?」  完全に無視を決め込んで伝説の鎧を取り出すと、槍騎士の前に並べていく。こんな変態どもの相手を、真正面からしている場合ではない。  能力や触れ込みに踊らされ、バランスと人間性の一切を排して組んでしまったパーティだが、魔王さえ倒せばそれも終わりだ。  故郷に帰り、千の扉に囲まれた夢の館で、扉の海に沈んで過ごすのだ。 「早くしろ、後がつかえている」  一式を並べ終えると、短く言って、オリハルコン製の扉に向き直った。  仲間の装備は由々しき問題ではあるが、それ以上にこちらだ。 「やはり壊してしまうのが早道では?」 「駄目だ」  後ろから、ガチャガチャと音をさせながら飛んできた声に被せ気味で答える。  壊すなんてとんでもない。何年かかっても、必ず方法を見つけ出し、持ち帰ってみせる。 「ではどうするんです? 手持ちの鍵も、最上級の開錠魔法や解呪魔法も駄目なんでしょう?」 「少し待ってくれ」
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