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――こんな風にしゃべって楽しいのは、柊崎のはずなのに
なのに今、互いの関係は確実に以前と変わった。切望した兄弟との再会は思ってもみない方向へ進んでしまった。実の弟を、恋愛対象として好きになってしまったからだ。
仕事を終えてオフィスに戻ると、数人の女子社員が一か所に固まって立ち話をしていた。ざわざわしているし、皆口元に手を当てて何やら深刻な表情だ。
「なにかあったの?」
川村が女子社員の一人に声をかけると、火をつけたように全員が騒がしくなった。
「柊崎さんが海外勤務になるかもしれないって噂が流れているらしいんですけど、本当ですか? 川村さん知ってました?」
矢継ぎ早に質問され、さすがの川村も押され気味になった。眞昼に気づいた他の女子社員が言った。
「ねえ、保高さんは何か聞いてない? 柊崎さんと親しかったわよね」
「え……」
彼女たちは不安気な様子で眞昼の顔に注目した。晃夜の女子人気は高いだろうと想像していたけれど、彼女達の表情を見れば明らかだった。
しかし、眞昼も同じくらい衝撃を受けていた。
「ちょっとちょっと、みんな落ち着いて。それってガチな情報なの?」
川村も驚きを含んだ声で言った。彼女達は揃って首を縦に振っている。眞昼は声も出なかった。
――なんでこのタイミングで、そんな話が出るんだ
「聞いてないの? 彼から」
川村に囁かれるが、眞昼は首を横に振ることしかできなかった。
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