12 会えない日々

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 眞昼は相手の同情を買うため、自分の顔面を武器に(過去に利用したことはないが)目をウルウルさせてみた。瞬きも多めにパチパチやってみる。(男相手に効くのか疑問だが) 「あー、そっかあ、それはショックだよねえ」  眞昼に同情したのか、山下は腕を組んでウンウンと頷いた。  よし、もう一押しだ。 「インドネシアですよね、いつ行っちゃうんですか」 「まあ、通常は一ヵ月後だけど、準備期間も考慮して半月プラス……」 「一ヶ月、半……」  本当に、インドネシアに行くんだ――。  山下はパッと両手で口を押さえた。 「保高くん……ズルいよう」 「すいません、無理に言わせてしまって。絶対口外しませんので、安心してください。あの、今度、ランチご馳走します」  山下はランチの言葉に顔を輝かせた。「えっホント? 何がいいかなあ~」と嬉しそうに言った。眞昼は「何でも好きなもの考えといてください」と言いながら、表情を取り繕うのに苦労していた。    山下から上手く情報を聞き出せたものの、定時過ぎても晃夜はオフィスに戻ってこなかった。どうやら「直帰」になったようだ。  毎日会いたい。会えないのは、嫌だ。  晃夜に対する恋情は胸の中にある。けれど、晃夜はずっと捜し求めていた『温かい手の兄』だ。実際は弟だったわけだが、これから兄弟として傍にいられると、嬉しかったのに。  ――俺、傍にいてほしいって、言ったのに    なのに、なぜ離れようとするんだ。 「直帰なら、電話入れてもいいよな」  
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