12 会えない日々

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 帰り支度をしながら、眞昼は晃夜の番号を呼び出した。   五回のコール音の後、『どうした?』と、第一声が、まるで眞昼を心配するような口調だった。 「どうもしてないけど、帰ってこなかったから、忙しかったのかなと思って。――あ、もう仕事終えたのか?」 『ああ、打ち合わせは終わったんだけど、これから接待』 「わ、大変だな……お疲れ」 『まあ、俺は慣れてるからな。――保高は? 今日、特に変わったことはなかった?』  すごく優しい声が耳に届いて、目の奥がじん、とする。そんな声で話されたら、想いが溢れ出してしまいそうになる。  本当に、普段はクールなくせに、眞昼には優しいのだ。  ――こんなの、好きになっちゃうよなあ…… 「おまえがいないから、つまんないよ……会いたい」  ポロリと、素直な気持ちが口をついて出た。  言ってしまってから、変だったかな? やけに甘ったれた口調になったし、と焦るが、兄弟ならこれくらい許容範囲だよな、とか一人頭の中でグルグル考えた。  しかし、晃夜はツッコむどころか沈黙している。 「柊崎? ……聞いてる?」  もしや通話が途切れているのかと確認する。 『あ、ごめん……ちょっとびっくりして』 「えっ、なんでだよ」  やっぱり変なことを言ってしまったかと焦った。眞昼がぐるぐるしながらドギマギしていると、耳元に晃夜の低い声が静かに届いた。 『俺も会いたいよ。――保高に会いたい』  ひどく切ない声だった。  やめろよ、そんな声出されたら、勘違いしちゃうだろ……。
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