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思いもよらない事実が社長の口から語られ、眞昼は訳がわからなくなる。
「あいつから言い出したんですか?」
社長は頷いた。
「ようやくその願いが叶って、僕も嬉しかった。前にも言ったけど、晃くんは本当に眞昼が大好きで大切に思ってるんだ。それなのに、今度は海外に行きたいだなんて言い出すんだもん。耳を疑ったよ。『長年の目標は達成出来たから、次は仕事を頑張りたい』なんてつまんないこと言うんだ。――でもさあ、仕事なら日本で頑張ればいいと思わない? 眞昼と同居して十数年分の兄弟の絆を取り戻しながらさ。その方が、きっと楽しいのに」
悲願、兄弟の絆。
眞昼の胸は温かくなったり痛くなったり、忙しかった。
「ねえ眞昼、君達いったいどうなってるの」
「どうって……」
眞昼は顔を上げた。――わからない。晃夜が眞昼を大事にしてくれるのはわかるのに、晃夜が何を考えているかなんて、わからなかった。
「俺には、あいつが何を考えているのかわかりません……。それに、あの日、社長と母さんに会いに行った後から今日まで、俺達の間に同居の話しは一切出ていません」
「うそ! ほんとに?」
「はい」
「まったく……。晃くん、何考えてるんだ~」
社長は、綺麗にセットされた髪をぐしゃぐしゃとかき乱した。
「眞昼、お願いしてもいい?」
「はい、なんでしょう」
真剣な眼差しを向けらせ、背筋が伸びた。
「僕はまだまだ、彼と日本で仕事をしたいんだ。海外事業は進める予定だけど、数年は国内で基盤を固めたい。そのためには晃くんの力が必要なんだよ」
「――はい」
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