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13 本当は傍にいたい
また来ちゃったな。
柊埼晃夜は、ふうと息を吐き、広いグラウンドを眺めた。
ブー、ブー、と振動が伝わり画面を見やる。
座っているベンチの横に置いたままにしていた携帯に、さっきから何度も同じ人物からの着信が入っていた。
「がんばるなあ、あいつ」
静かに呟き、それからスッと目を逸らす。同時に胸の痛みを感じた。
何年も前から、ずっと感じている胸の痛みだ。
それは一向に弱まることなく、現在も晃夜の胸を傷め続けている。無意識にギュッと胸元のシャツを掴んだ。
「もう、バレちゃったかな……」
晃夜がインドネシアへの移動願いを出した時、手続き上のこともあり、総務の課長と主任には情報が伝わっていた。
しかしその後、社長である父との会話を秘書に聞かれた可能性が高かった。彼女の、自分への好意は薄々感じていたから、ショックを受けて誰かに話しているかもしれない。女子の情報網は恐ろしく速いから、あっという間に広がるだろう。
晃夜は自分が項垂れているのに気づき、顔を上げた。
視線の先には、中学校のグラウンドがある。その向こうには、晃夜と眞昼が一年間だけ一緒に過ごした学び舎が建っている。
中学三年生の、たった一年間。けれど晃夜にとっては生涯忘れられない、充実した濃い一年だった。
「眞昼……」
愛しい存在の名を口にする。それは常に晃夜に寄り添い、心を温めて励ましてくれていた。
けれど――。
離れて想い続けるのと、すぐ近くて想い続けるのとでは、天と地ほどの差があるのだと知った。
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