13 本当は傍にいたい

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 傍にいられればいい。眞昼の傍にさえいられれば、何もかも満たされる。たとえ、秘めた想いを抱えたままでも。そう思っていた。 「けど……甘かったな」  膝の上に投げ出した手の平を見つめる。開いたり、握ったりしてみる。  すべてを忘れてしまった眞昼が、ただ一つ覚えていたもの。晃夜の手の温もり――。  眞昼はその手が自分の兄だと思い込んでいた。存在を忘れられていたのはショックだったけれど、それなら元同級生として再会を果たし、新しい関係を築き上げていけばいいと思った。  新しい職場で右も左もわからない眞昼のために、出来ることをやろうと思った。  結果、眞昼の信頼を得られた。同僚としての好意は持ってくれていたと思う。  時々すがるような視線を向けられ、もしかしたら、眞昼も自分と同じ想いなのではないかと期待した瞬間もあった。  けれど、双子の兄弟だとわかった後、感激して泣き出す眞昼を見て、「俺とは好意の種類が違う」と感じた。  眞昼は純粋に元同級生、職場の先輩、兄弟として、誰に知られても後ろめたくない好意を晃夜に向けていた。  ――友情、信頼、家族愛  ――完全に、俺とは違う  眞昼の傍にいたい。離れたくない。でもそれ以上に、眞昼が欲しくてたまらない。  血を分けた兄弟でも、眞昼を誰にも渡したくない、自分だけのものにしたい。  こんなどす黒い感情を抱えたまま、眞昼の傍にいたら、この先どうなるのか自分でも予想がつかない。  長年の想いが暴走して、眞昼の心も身体も傷つけてしまうかもしれない。それが何よりも怖かった。
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