13 本当は傍にいたい

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 不思議なことに、眞昼の居る場所がわかるということだった。  例えば、スーパーで再会した後眞昼の自宅に行ったとき。コンクリートの建物を見上げて、眞昼は部屋に居ると感じた。  眞昼が入社して、単身用のマンションに引っ越した後も、眞昼が在宅かどうか、晃夜にはなぜかわかった。  何度か「いないのかな」と感じたときは、眞昼がコンビニに出かけていたり、留守にしていたり。  眞昼と再会してから、その感は、全て的中している。  眞昼への強すぎる恋情は自覚していたから、晃夜は「どんだけ好きなんだよ」と独り言ち、我ながら何度呆れただろうか。  けれどその直感は恐らく、双子の兄弟に与えられた唯一の特権なのだ。  奥から笑い声が聞こえて、晃夜ははっと顔を上げた。  裏口のドア横の窓に視線を移す。カーテンが引かれているが、わずかに隙間があった。そっと中をのぞくと、店長と、アルバイトと思しき数人の若者が立ち話をしていたる。    眞昼の姿はなかった、思った通りだ。晃夜は方向転換し、走り出した。    向かった先は、眞昼が数カ月前まで住んでいた都営団地。    見上げたコンクリートのその部屋には、真新しいカーテンが引かれていた。ポストを確認すると、案の定新しい住人の名前が入っていた。 「迎えに来い」ってことは、俺も知ってる場所にいるってことだよな。  眞昼の部屋以外、一緒に歩いた場所はなかったが、やっぱり近くに眞昼がいるような気がしていた。ほとんど居てほしいという願望が強いのだが。
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