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「あいつ、まじで来てくれんのかな。ここがわかるかな……」
夕焼け空がどんどん暗くなり始めて、同時に不安になってくる。
メッセージアプリは既読になっていた。だから、きっと迎えに来てくれると信じたい。
来てほしい。
『元の職場に戻る』
そう書いた通り、眞昼は元の職場のスーパーを数カ月ぶりに訪れた。
裏口から入る勇気が持てず、適当なペットボトルを手に客として入店し、一人だけ顔を知っている学生アルバイトのレジ前に並んだ。
彼から店長がバックヤードにいるのを聞き出し。会いに行った。
店長は驚きつつも、会いに来たことを喜んでくれた。
事務所やバックヤードを忙しなく動き回るアルバイト定員達は知らない顔ばかりだった。
当時眞昼の他にいた三人のパートタイマーは、全員辞めたと聞かされた。
滞在時間十五分。店長との感動の再会はあっけなく終わった。
五年間務めた元職場には、もう眞昼の居場所はなかった。けれど、不思議と淋しくなかった。
もう、自分の居場所は晃夜の隣で、父親の経営する会社なのだ、と実感した。
なのに――。
「一緒にいたいと思ってるのは、俺だけなのかよ、柊埼。……そうじゃないよな?」
空は明るいオレンジ色なのに、近くの木々は暗い色になってきて、街灯も次々点灯していく。
自分の周囲も薄い闇の中に飲まれ暗い色になっている。
眞昼は空を見上げた後、足元に視線を落とした。
そういえば俺、いるはずのない兄に会いたいって柊崎に何度も話したよな。
あいつ、俺が兄捜ししてるのをいったいどんな気持ちで見てたんだ。
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