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眞昼は、簡単に答えを出すことができなかった。
「俺は……」
「眞昼!!」
背後から名前を呼ばれた。
――え?
ブランコに座ったまま振り向くと、街灯に照らされたシルエットが見えた。
「ひ、ざき?……」
暗くて顔は見えない。
それに、晃夜には「保高」と呼ばれるのが常だったから確信が持てなかった。
声は柊崎にそっくりだけど、もしや自分の都合のいいように聞こえてるのかもしれないと、頭は疑問で一杯になる。
でも……。
眞昼は立ち上がった。その反動で、錆びついた鎖がガシャンと鈍い音をたてた。
「柊崎だよな?」
よく見ようと目を眇めた眞昼に向かって、そのシルエットがぐっと近づいた。ほとんどぶつかるように抱きしめられる。
「ぅわっ!」
その身体は熱く強張っていて、心臓の鼓動までもが眞昼に伝わってくる。
「おい! ちょっと! 柊崎なんだよな?」
耳元で、はあーっと長いため息が漏れ「俺以外の男に簡単に抱き締められたら怒るぞ」と囁かれた。その低い声に背中がぞくりと撫でられる。
「うっ……」
「……よかった、眞昼、見つけられて……」
再びため息を吐き、晃夜の腕はさらに強く眞昼の身体を拘束した。眞昼の全身を、寒気に似た歓喜の痺れが襲う。
本当に、柊埼なんだ。本当に来てくれた。
晃夜が傍にいる。その事実が何より嬉しかった。
「まじで何やってんだよおまえ、こんな場所で」
うっとりしかけた眞昼は、ムッとして言い返した。
「何って、決まってんだろ。おまえが迎えに来てくれるのを待ってたんだよ!」
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