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「……そうだよな。――はは……良かった」
心底安堵するような声が、耳から、密着した身体から響いてくる。眞昼は待ちわびた男の背に腕を回し、彼の肩に顔を埋め、目を閉じた。
「やっぱり柊埼の傍は安心するよ」
「……うん」
日が暮れる中、二人はしばらく抱き締め合ったままでいた。
「俺ら、誰かに目撃されたらヤバいかな」
「放っとけ。酔っ払いだと思うだろ」
「そうだな」
少しの間を置いてから、晃夜がポツリと言った。
「俺、この公園初めて来たんだけど」
「あれ? そうだっけ」
ハーッと、何回目かわからないため息が吐かれた。
「まったく……勘弁してくれよ。元の職場に戻るなんて言うからビビった。店に行って、裏口から覗いたら居なかったし、もしや団地に行ったのかと思ったけど、周囲はどんどん暗くなるし、見つけられなかったらって、焦って……とにかく心配した」
「まじで、ごめん」
「はあ……」
「――で、何でいきなり眞昼呼び?」
「あ……」
晃夜の腕が一瞬緩んだから、眞昼は自分からギュっと強く抱き付いた。
「何でだよ。再会してからずっと保高呼びだったのに」
「……俺は、ずっとおまえのことを覚えてたんだぞ。双子の兄だとちゃんと知ってたし。兄弟なんだから下の名前で呼ぶのが自然だろ」
そうだ。眞昼がすべてを忘れていた間も、晃夜は父や祖母と眞昼の話をしていたと話してくれた。
「そっか……そりゃそうだよな。じゃあ、これからは眞昼って呼んでくれよ」
当然、快い返事がもらえると思っていたが、晃夜は黙ってしまった。
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