14 絆

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「駄目なのか? ――あ、社内ではまずい、とか?」  でも、社長(とうさん)は秘書の女性に眞昼が晃夜の兄だとバラしていたけど。 「いや、そういうわけじゃ……」  晃夜が腕を下ろしたから、眞昼の身体は拘束から解けた。けれど、二人の間に空気さえ通るのが嫌だと感じた。息がかかるほど、晃夜の近くに居たいと、はっきりと思った。 「別にいいんだ、呼び名なんて、何でも……」  わがままを言ったつもりはなかったのに、何がいけなかったんだろう。すぐ近くにいる晃夜との間に見えない壁が出現した。  さっきは、すごく近くにいたのに。 「本当に、どうでもいいよ、そんなのは。――俺は、柊埼さえ傍にいてくれれば」  俯きがちだった晃夜が、はっと顔を上げる。 「海外になんか行くな。どこにも行くな」 「保高……」  晃夜への想いは少しも冷めていない。 「俺の傍にいるって言っただろ」  これから兄弟として一緒に過ごしたとしても、きっとこの先もこの恋心は冷めないだろう。それをいやというほど実感していた。 「おまえが傍にいないと、俺は駄目だ」  勇気を出して言ってるのに、晃夜はためらいがちに口元を歪めるだけで、何も言ってくれない。 「なあ……頼むよ柊埼」 「俺は……」  陽が落ちて気温も下がってくる。風が出てきたのか、周囲の木々の葉がざわざわと音を立て始めた。早くこの場所から立ち去れと、追い立てられているような気になってくる。  晃夜がすぐ目の前にいるのに、心が寒い。  なんでだよ、どうしてだ。 「――そんなに、俺から離れたいのか」 「えっ」
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