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「俺と一緒にいるうちに幻滅した? 駄目なヤツだって再確認したのか? 確かに俺みたいに頼りないのが兄なんて、情けなくて嫌かもしれないけどさ」
「バカなこと言うな、幻滅なんかするわけないだろ!」
こっちは必死なのに、馬鹿なんて言われたらカッと頭に血がのぼる。
「じゃあなんでだよ! なんでおまえは海外へ行こうとしてんだよ! 社長だって反対してるのになんで!」
「それは……」
先程の勢いは消え、晃夜はまた俯いてしまう。
「話してくれなきゃ、わかんねーよ……」
ハッと顔を上げた晃夜は、ためらいがちに唇を動かすが、そこから吐き出されたのは吐息だけだった。
「柊崎が何を考えてんのか、俺全然わかんない。こんなことになるなら、――おまえと兄弟だって知らない方がよかった」
「保高……」
傷ついたような表情の晃夜に向かって、眞昼はすべてをぶちまけたくなる。
傷ついてるのも、胸が裂けるように痛いのもおまえじゃない。全部俺だ。
こっちは恋心を必死に隠してんのに。
「なんだよその顔。俺から逃げようとするやつにそんな顔されたくない。また離れ離れになるなら、このままでも、ただの元同級生に戻っても同じだろ」
「――同じじゃない……全然違う」
「違わない!」
「違う!!」
静かな公園内に、晃夜の鋭い声が響く。
街灯と月あかりに照らされた二人の間を、複雑な空気が漂った。
違う。こんなのは、違う。こんなのは嫌だ。
「俺――先に帰る。おまえと一緒に帰ったら、また頭に血がのぼりそうだ」
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