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情けない自分に耐えられないし、晃夜の顔を見ていたら泣き出してしまいそうだった。
離れたくない。一緒にいたい。でも、このままじゃ……。
俺は、気持ちを隠し切れなくなる。兄弟でいられなくなるかもしれない。
ああ、でも。と眞昼は思った。
晃夜が海外へ行って離れ離れになるのなら、いっそ想いを打ち明けて、この穏やかな関係を壊してしまえばいいのかもしれない。
晃夜を驚かせてしまうだろうけど、離れてしまえば、久しぶりに再会した兄のことなど、思い出さなくなるだろう。
実の兄に恋情を向けられたというショックも、薄れていくかもしれない。
俺と再会したことを、後悔してほしくないけどな……。
晃夜に背を向けて歩き出していた眞昼は、足を止めた。
次の瞬間、眞昼の身体は背後から抱きすくめられた。
「えっ……?」
「眞昼っ……」
切なげに名前を呼ばれ、心臓が再び撥ねる。
「なんだよ、さっきは嫌がったくせに。――名前で呼ぶな」
「眞昼……」
だから、そんな風に愛し気に名前を呼ぶな。勘違いしちゃうだろ。
晃夜の腕が、ますます強く眞昼を拘束する。その腕が、背中に当たる胸が、彼の体温が、眞昼の身体に流れ込んでいく。
好きだ、好きなんだよ。おまえがどうしたって好きだ。
吐き出したくて、でも出せなくて、気力で抑え込んでいた晃夜への強い想いの塊が、出口を探して眞昼の身体中を駆け巡っている。
それが今にも溢れ出しそうで、眞昼は立っているのも辛くなってくる。
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