14 絆

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「――行くなよ」 「勝手なこと言ってんじゃねえ。離せ」 「嫌だ」 「ふざけんな」  眞昼の胸に回された晃夜の腕が、食い込むようにきつくなる。  なんだよ、それ。  柊埼を引き止めたいのは、俺だ。 「まじで勝手だな」  腹が立って、悔しくて、無意識に晃夜の腕に爪を食い込ませた。 「俺が行くなって言ってんのに離れて海外行っちまうのはおまえだろ! 馬鹿にしてんのか? 俺が行くなって言っても聞かないくせに、なんで引き止めんだよ! 矛盾してんだろ!」  怒りと、淋しさと、晃夜への恋心が一気に湧きあがって、どうにかなってしまいそうだった。 「離せよ! 離せ!」 「嫌だ! 行くな!」 「柊埼!」  晃夜の腕が触れているから、怒りや淋しさよりも、恋しさに負けそうになる。 「俺の気持ちは無視して……傍にいてもくれないくせに」 「好きだからだよ!!」  一瞬、空気が止まった気がした。 「――は」 「好きなんだ、眞昼が、好きだから……」  は? えっ、何? 好きって、俺の気持ちが――バレてたのか?   俺が柊埼を好きなのが、バレた?  眞昼の中はほとんどパニック状態だった。  周囲の音が、風のざわめきが、耳に届かなくなる。  自分の呼吸音と騒がしい心臓の音、晃夜の息遣い。胸と背中が、焼けるように熱かった。  二人の音以外、何も聴こえなくなった。  どうしよう、どうしよう。――え? いつから? それで? え、でもなんで……。  そういえば、川村にはすぐにバレたのを思い出す。 「俺……そんなにわかりやすかった……?」
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