15 誓い

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 繋がれた手に視線を落とした。  他の入居者が通るかもしれない共用廊下で、眞昼は選択を迫られている。  眩暈がしそうなほどの、甘い選択を。  眞昼は、震えそうになる声を振り絞り、疑問をそのまま口にした。 「なあ、なんでさっき、眞昼って呼ぶの嫌がったんだよ」 「――嫌なわけない、本当は呼びたくてたまらなかったよ。ただ……会えない間、淋しいときも切ないときも、ずっと眞昼の名前を呼んでたからさ。だから、眞昼の名前には、俺の長年の想いが込められてるから、気持がバレちゃうかもって、怖かったんだ」 「想い……」  眞昼から視線を外し、少し遠くを見つめる晃夜の目が、切なげに細められた。  俺が何も知らずに兄の手の温もりだけを支えに生きていたとき、こいつは、俺の名前を呼んでくれていたんだ。  何年も、ずっと。 「――そういう理由だったのか。……ごめん、俺、無神経だったな」  首を振る晃夜がひどく頼りなげに見える。  それぞれの部屋へ帰ったら、自分と離れたら、晃夜は今夜も眞昼の名を呼びながら眠るのだろうか。  そんな姿がリアルに想像できて、今こいつを帰したらダメだ、帰したくない、と思った。  もう待たせたくない。  手を繋いでない方の手で鞄から鍵を取り出し、鍵穴へ差し込む。「入って」と、ドアの中へ晃夜を引っ張り込んだ。 「……眞昼」  ほらまた、そんな風に名前を呼ぶ。 「ごめん、ずっと淋しい想いをさせて。待たせて……」  眞昼はたまらなくなって、晃夜を抱きしめた。僅かにその身体から強ばりを感じた。  
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