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「は? あのクソ親父にドキドキしたのかよ」
「柊崎に似てるから、ドキドキしたんだよ!」
実の父親相手に本気で嫉妬している晃夜が、なんだか可愛く見えて愛しくて、眞昼は晃夜の唇にそっとキスをした。眞昼から仕掛けるのは初めてだ。
すると、驚いた表情の晃夜の顔が真剣なものに変わった。
「……どうした柊崎?」
「そう遠くない将来。香帆さんと親父が結婚すれば、俺たちも自動的に籍を入れることになる。あの二人は式も披露宴を派手にやりそうだけど。――その後、俺と二人きりで、二人だけの結婚式を挙げて欲しいんだ」
「柊埼……」
眞昼は晃夜の目を見つめた。その眼差しはどこまでも澄んで真剣で、本当に自分が、晃夜からひたむきな想いを向けられているのを実感する。
鼻の奥がツンとして、眞昼の視界がたちまちぼやけて、温かい液体が潤んでくる。
「俺たちがいつか、年とって白髪になって、よぼよぼの爺さんになって死ぬまで、ずっと俺の傍にいて欲しい。いいか眞昼、これはプロポーズだぞ」
「あ……」
涙が瞼から溢れ、目尻から耳側へ流れる。その涙を、晃夜の指がそっと拭った。
「眞昼……返事は?」
嗚咽を堪え、眞昼は何度も頷く。
「……うん、俺も、ずっとずっと、柊崎と一緒にいたいよ。絶対に離れない」
引き合うように顔を近づけ、唇を重ねる。神聖な誓いのキスだ。
それは飽きることなく、何度も何度も、繰り返された。
ベッドの中の二人の手は、しっかり繋がれていた。
了
2021.11.7
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