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呆れ混じりに呟かれ、思わずムッとする。まるでドアを開けた眞昼が悪いような言い草と態度ではないか。しかし咄嗟に言い返すことができずただ口をパクパクするしかなかった。
「宗教の勧誘とか妙なセールスだったら面倒なことになりますよ」
「いやだってさ、びっくりして……。なんだよ、そっちだってずいぶん失礼な態度だよな。この前と全然違うし。……それで、朝から何の用? なんで俺んち知ってんの」
別人みたいじゃんサギかよ……とブツブツ口の中で言うと、彼は片方の眉をくいっと上げて眞昼をじっと見た。その遠慮のない真っすぐな視線にややたじろぎながら、眞昼も負けじと見返す。
先日と同じく、彼は仕立ての良いスーツに身を包んでいた。視線を落とすと、先端の尖ったブラウンの靴は顔が映り込みそうなほどピカピカで、スラックスのポケットに手を突っ込んでいるのも嫌味なほど様になっている。
「あのさ……こんないきなり俺んちに来たってことは、やっぱり中学の同級生って……こと?」
自信がないので語尾は小さくなってしまった。彼の眉がピクッと反応する。
「さあ? ……どうでしょう」
「え――……」
そんななずはないと眞昼は顔を近づけ、改めて間近で観察した。身長や体格は眞昼とほぼ同じくらいのようだ。
――顔の造作には相当な開きがあるけど
眞昼が顔を近づけたとき、彼は一瞬ひるんだように目を見開いたがすぐに元のクールな表情に戻ってしまった。
「他人の空似かもしれませんよ」
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