3 元同級生?

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 やけに軽い調子に聞こえたのは気のせいだろうか。近づきすぎたせいか、彼の目は眞昼の視線から逃げるようにあさっての方向を向いた。 「顔だけじゃなくてなんていうか、空気ってゆーか」 「それより保高くん」 「――はい?」  名前を呼ばれてちょっと嬉しくなってしまった。 「俺の名前……思い出したのか」  玄関ドアの横には、表札は出していない。母が出た後、なんとなく外してしまったのだ。 「この前名札で見たし、店長さんに確認したので、それで」 「なんだ、そっか」 「これから一緒に行ってほしい場所があるので、支度してください」 「え、これから? ……俺とあんたで? 行くってどこに」  彼は無表情のまま答えた。 「おいおい説明しますが、最初に訪問するのはお母様のお住まいです」  ――ん? こいつ今「お母様」って言った? 「お母様って、誰のお母様だよ」 「あなたの……保高君のお母様です」 「は? なんだって、俺の母ちゃん? なんでおまえが俺の母ちゃんちを知ってんだよ。そもそもなんで、おまえに連れられて行かなきゃなんないんだ」  頭に血が上って「あんた」が「おまえ」になってしまったが、構うものか。 「それは……」  今にも顔と顔がくっつきそうな距離なのだ。目の前の彼が眞昼の反応にイラついているのがよくわかる。そして、その感情を押し殺しているのもよくわかった。  実際のところ、彼の正体が中学の同級生なのかどうかも答えてもらえていないし、眞昼の頭の中はクエスチョンマークだらけだった。  そもそも、彼が元同級生だというのも眞昼が勝手にそう思っているだけで、本人はイエスともノーとも答えていない。
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