3 元同級生?

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「え~……」  ぷうと頬を膨らませる眞昼に向かって、彼は人差し指を突き出した。 「自力で思い出せ」  そこまでかよ! と思いつつ、並んでエレベーターを待った。すぐに到着した扉の中に二人で乗り込む。ボタンを押す彼の手は、男の手にしておくのはもったいないほどの綺麗な手だな、と思った。 「なあ、やっぱ同級生なんだろ、中学の」  彼はチラ、と眞昼を見るが何も答えなかった。二人を乗せた鉄の箱は音もなく十階で停止する。 「おお、このエレベーターも超最新式って感じだなー」  スッとドアが左右に開くと、彼は停止ボタンを押したまま言った。 「降りて真っすぐ進んだ正面、1001号室に君のお母さんはいる。俺は、一階のロビーで待ってるから」 「えっ、俺一人で行くの」  彼の表情が驚いていた。 「――自分の母親に会うのに、付き添いが必要なのか?」 「あっ、いや……」  ――そういうわけじゃないけどさ、……いや、だよな。なんでだよ、俺  確かにそうだ。生き別れの母と数十年ぶりに再会するわけでもなく、数日ぶりなのだから。  でも、来たこともない建物の中が、やけに無機質に感じられたのだ。ここに自分の母がいるのに(まだ事実かわからないけど)眞昼は当然、彼も一緒に来てくれると、疑わなかった。 「あー、じゃあ、行って、くるよ」 「ああ」  彼が乗り込んだエレベーターを、数秒見つめた。 「おい名前! やっぱ教えて!」  眞昼の声が聞こえたはずなのに、エレベーターのドアは閉じようとしていた。
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