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パッと手を伸ばしてそれを止める。
ゴンッと音を立て、反動で再び開いた。
「おい、危ないだろ!」
「あんたの名前! だって変だろ、名前も知らないやつに母ちゃんの居場所教えてもらうなんて。てか、ほんとに母ちゃんここに住んでんのかよ! あんた、母ちゃんとどういう」
「……コウヤ」
「え?」
再びドアが閉まる瞬間、眞昼は叫んでいた。
「そうか、コウヤ……柊崎晃夜だ!」
ぎりぎりのところで、彼の見開かれた目が見えた。エレベーターは光の点滅と共に降りていく。
「そうだ……思い出した。あいつは、柊崎晃夜だ。クラスは……同じかわかんないけど」
眞昼の悪い癖で、昔から辛いことも楽しいことも、すぐに忘れてしまう。二十一歳だから、中学時代の記憶などは最近のことなのに、でも。
「俺が昼で、おまえは夜……」
昔、眞昼が晃夜に言った言葉も、思い出していた。
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