4 母と再会

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「どうした、こんなところで」  ラウンジとは反対側にあるエントランスの階段に、眞昼は座り込んでいた。人気(ひとけ)がない場所を探したからだ。  五十センチほど空けて、隣に晃夜が座った。 「お母さんからメールがきた。お前の事をよろしくって。なのに、いつまでたっても戻ってこないから心配したぞ」  眞昼は少しだけ顔を上げた。 「それは、級友として? それとも、これから働く仲間として?」  深い意味はなかったが、ただ訊いてみたかった。ぽつりと、晃夜が呟く。 「両方、かな」  心配されたのが嬉しかった。胸がじんわりする。  なのに、自分は晃夜のことをすぐに思い出せなかった。自分が薄情な人間に思えて、眞昼は自嘲気味に薄く笑った。 「中学の事なんて、すっかり忘れてると思ったけど、意外と覚えてるもんだな。――いや、思い出したんだ。あの頃の柊崎は、すごく目立ってたよな。見た目はもちろん、文武両道で男女問わず人気があった。俺みたいなイケてない男子からしてみたら、眩しい存在だった。学年の女子の半数はおまえに惚れてたんじゃないかってくらい」  晃夜は何も言わず、静かに座っている。 「なんてゆーか、俺の悪いくせでさ、過ぎたことはいいことも悪いこともみんな忘れちゃうんだよね。でも、お前が球技大会や体育祭で活躍して、女子にキャーキャー言われてた光景が浮かんで、それで思い出した」 「キャーキャーって……」  晃夜は呆れた顔を出した。 「いやいや、言われてたって!」  眞昼はバッと身体を起こし、晃夜に身体を向けた。
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