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真っ黒な晃夜の髪をさらりと風がすくう。それに似た場面も思い出した。
「そうだ体育祭……中三の応援合戦、柊崎は団長で青い鉢巻だった。そんで、俺の鉢巻の色は忘れたけど、お前達のチームが優勝して、お前ガッツポーズしながら胴上げされてた」
「……思い出したのか」
あのときの晃夜と、目の前の晃夜の姿がシンクロする。
「ははっ、お前の顔見てたらどんどん思い出した。不思議だなー」
幼い頃、淋しくて辛い思いをした。だからなのか、思い出に蓋をしながら生きてきた。そうしないと、前へ進めなかったから。
「なんか色々急展開で、頭が全然追いつかないんだけど、えーと柊崎は、母ちゃんの彼氏の会社の社員なんだよな? で、どういうわけか俺のお守りを任命された」
「ああ、まあな」
ということは、柊崎は大人の事情を全て知っているのだ。それで偶然中学の同級生ということで、お守り役を引き受けた、という経緯だろうか。
晃夜の横顔を見ながら、つくづく男前だなと思った。彼の場合、モテ期は中学時代から続いているのかもしれない。ただ整っているだけでなく、目鼻ひとつひとつのパーツの位置が絶妙で、好ましい。ここにも格差を感じる。
もっと何か思い出せないだろうかと、目を細めたとき、晃夜が呟いた。
「俺の父親、うちの会社の取締役なんだ」
――完全に格差決定だ。
「つまり社長? すごいな!」
眞昼は興奮して距離をつめた。間近で見つめあう格好になったが、気にならなかった。
「じゃあ、柊崎も将来、会社を継ぐかもしれないんだな、すげえ、お前時期社長かよ」
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