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やっと気持ちが落ち着いてきたところだったのに、また心細さが襲ってきた。
「おい、保高」
更に離れる眞昼に対し、晃夜は距離を縮めてくる。涙腺が緩むのを止められなかった。
「やだよ、俺……」
ぐっと強引に手を引っ張られ、肩を抱かれた。
「落ち着けって。――大丈夫だ、俺は迷惑だなんて感じてないから」
背中をポンポンと軽くたたかれた。
「俺がいるから」
同い年の友人からそんな行為を受け、恥ずかしくて戸惑う。
「……大丈夫だから、心配するな」
子供をあやすような優しい手つきに、眞昼の体から力が抜けていく。晃夜の繊細な手を思い浮かべると、徐々に落ち着いてきた。
「――あのさ」
「ん?」
「柊崎ってさ、下に弟か妹いる?」
晃夜は手を止めずに答えた。
「いや、俺ひとりっ子」
「じゃ、帰国子女、とか?」
「一応、留学の経験はあるけど」
「そっか……」
眞昼は、勇気を出して晃夜の肩にこてん、と額を乗せてみた。トゲトゲしていた気持ちがどんどんほぐれていくのを感じた。
「大丈夫か?」
「うん。さすがモテ男は違うね。そのテクは、対男子にも使えるのが証明されたってわけで……あ、ありがと」
「どういたしまして」
――否定しないんかい!
顔は見えないけれど、クールなイメージの昇夜がどんな表情なのか気になった。ふいに手を握ってみたいと思った。
さっき手首を引っ張られた手の平はひんやりしていた。その手の感触を、自分の手で確認してみたくなる。
「もう元気になった?」
「うん……平気」
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