6 新生活

9/12

136人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
♢ 「美味い! やっぱ高い米は違うね!」  眞昼は真っ白いご飯を口一杯に頬張り、感嘆の声をあげた。 「だろ? 米は大事だぞ。これからは俺が持ってくるから、勝手に買うなよ」  テーブルの向かいで、晃夜もご飯の盛った茶碗を持ち、綺麗な端使いで豪快に食べる。 「この筑前煮ほんと美味しいなあ、柊崎のおばあさん料理上手だよね、昨日の唐揚げと中華風の炒め物も超美味かったし」 「回鍋肉(ホイコーロー)な。ま、あの人料理が趣味みたいなもんだからな、大抵のものは作れる。リクエスト出してもいいぞ」 「えっまじで? え~、何がいいかな~」  入社と同時に引っ越した(おまかせパックで)眞昼の部屋。  二人がけのダイニングテーブルの上には、晃夜の祖母手作りの筑前煮、煮魚、ポテトサラダ、晃夜が持ち込んで眞昼が炊いた米、朝作った味噌汁が並んでいる。こうして晃夜と一緒に夕食を摂るのも、すっかり日常になりつつあった。  晃夜は、就業時間が遅い日は外食に付き合ってくれて、比較的早い日は、眞昼の部屋で一緒に食事をする。職場では教育係で、退勤後もこうして当たり前のように傍にいてくれる。  休日は買い物に行ったり、ドライブに連れて行ってくれたりする。だから兄を探すことに躍起になっていた眞昼も、まずは仕事に集中して、次に兄を探せばいいと、気持ちを切り替えることができたのだ。 「あのさ、柊崎はお祖母さんと二人暮らしだろ。夕飯一緒に食べられないと、お祖母さんが淋しいんじゃないの」
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

136人が本棚に入れています
本棚に追加