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「あの人、就寝が八時か九時なんだ。夕飯の時間も早いから平日は間に合わない。でも、朝食は必ず一緒に食べるから大丈夫だよ」
「でも……」
自分が晃夜を独り占めしているような気がして、申し訳ないのだ。手が止まった眞昼を、晃夜は見つめた。
「祖母ちゃん友達が多いから、しょっちゅう誰か来てるし、おまけに犬も二匹いて常に賑やかなんだ」
「へえ、ワンコもいるんだ」
この二か月一緒にいて、一見クールな晃夜がどんなに優しい男か知っている。眞昼のためにそう言ってくれている気がして、眞昼は上目遣いに晃夜を見た。
一瞬目を見開いた晃夜は、飲んでいた味噌汁のお椀と箸を置いた。
「そんなに気になるか? それとも、夜は一人で食いたいか?」
「えっ」
「俺は、別にお前のためとかじゃなく、俺が来たいからここにいるんだけど、確かに仕事も休日もずっと一緒だけど……迷惑だった?」
眞昼はぶんぶん首を振った。
「そんなわけないだろ! 迷惑だなんて、考えたこともないよ」
言ってから、眞昼はテーブル越しに晃夜の手に自分の手を重ねた。
自分が放った一言に、いろんな想いが込められているのを感じる。晃夜は手の平を返し、眞昼の手を握ってくれた。彼の手の平は、いつだってひんやりしていて、不思議と安心する。
母のマンションに連れて行かれた日、混乱して落ち込んだ眞昼の肩を抱いてくれた。生き別れの兄が会社にいると聞かされてショックを受ける眞昼を、抱きしめてくれた。
慣れた行為に思えたけれど、海外留学が長いとは言え、普通は男友達相手にそんなことはしないだろう。
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