6 新生活

11/12

136人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
 けれど、眞昼はその行為が嬉しかった。ずっと自分が、兄に求めていたことだから。  それからというもの、こうして晃夜と二人きりになると、眞昼は遠慮なく晃夜の手に触れる。  最初は勇気がいったし照れくさくてしかたがなかったけれど、もう慣れてしまった。時折、晃夜から手を握ってくれることもある。 「柊崎」 「ん?」  将来兄弟になるかもしれない相手だけど、過去にも、こんなに濃い付き合いの友人はいなかった。  だからなのか、最近は晃夜と離れるのが淋しい。顔が見えないと、気がつくと晃夜は何をしてるだろうと考えてしまう。  晃夜は、静かに眞昼の言葉を待っている。二人の手の温度が同じくらいになっていく。 「俺さ、お前が、柊崎がいてくれないと……困る、っていうか」  元同級生で現在は同僚で、近い将来は義理の兄弟になるかもしれない男。晃夜がわずかに目を見開いた。それが真剣な眼差しに見えて、眞昼は言葉足らずな自分がもどかしくなる。  同時に恥ずかしいやらいたたまれないやらで、俯く。 「それは、淋しいから?」  晃夜がゆっくり言った。 「あ、いや、その、なんていうか、柊崎がいないと淋しいってことで、他の誰かじゃなくて、お前じゃないと嫌なんだ」 「保高……」 「柊崎に……傍に、いて欲しい、から」  言ってしまってから、わーっと頭を抱えたくなった。いくら本当のことでも、こんなにストレートに言う自分が信じられない。  眞昼は思わず、空いた左手で自分の顔を覆った。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

136人が本棚に入れています
本棚に追加