7 依存?

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7 依存?

 眞昼の初めての担当デビューは、晃夜に支えられながらなんとか成功した。  期限ギリギリだったものの、内装が完成し、新しい家具が予定通り搬入された。フランス料理店のオーナー夫妻は満足した様子で、「とても気に入ったよ、ありがとう」と言ってくれた。眞昼は初めての担当故、思い入れも強く、完成した店内を見回して目頭が熱くなった。  隣に立つ晃夜に「お前、感動しすぎ」と肘でつつかれたが、そう言う晃夜も眞昼と同じような顔をしていたと思う。  初めての慣れない仕事で、苦労も多かったし落ち込むこともあったけれど、次はどんな仕事だろう、クライアントはどんな人達だろう。もっともっと晃夜と一緒に仕事がしたいと、眞昼は前向きでやる気と希望に満ちていた。  ――のだが。 「保高くん、クライアントの希望要綱だけ、今日中にまとめておこう。会議室は……二番が空いてるから、先に準備してて」  そう言うと、川村は休憩コーナーへ歩いていった。おそらく喫煙のためだ。 「あ、はい。わかりました」  眞昼はブリーフケースから書類や資料を取り出す。一応総合カタログも脇に抱え、二番会議室へ入った。  会議室といっても、透明のパーテーションで仕切られた空間に、テーブルと椅子が置いてあるだけなので、丸見えの造りだ。(ひそひそ話しなら漏れないかもしれないけど)  眞昼が書類と資料を広げ、赤ペンでチェックを始めていると、「お帰りなさい」という女子社員達の声が耳に届いた。  ふと顔を上げた先に、晃夜の横顔が見えた。三日間顔を見なかっただけなのに、十日くらいに感じてしまう。
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