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席に着くなり注文した生の中ジョッキをカチンと合わせ、「お疲れー」「お疲れ様でした」とねぎらいの言葉を掛け合った。キンキンに冷えた生ビールは疲れた身体に染みるように入っていく。
「美味い……」
眞昼は思わず呟いた。
「仕事上がりのビールは最高だよねー」
川村は早くもジョッキの半分以上空けている。
よくドラマなんかで、主人公が同僚と居酒屋やバーとかに寄り道するシーンは何度も見ているけれど、実際に居酒屋に入るのは初めてだった。
そういえば、柊崎と酒飲んだことないな。どうせなら、あいつと来たかったな。
せっかくの居酒屋デビューを、晃夜不在で体験してしまったことを残念に感じた。
もし、目の前にいるのが晃夜だったら、居酒屋初体験の眞昼をからかうだろうけど、でも、無条件で晃夜と一緒がいいと思った。楽しいことや嬉しいことは、全部晃夜とがいい。
俺って、あいつに依存してんのかな……。
そうなのかもしれない。けれど、忘れっぽくて他人に興味のない自分が、晃夜のことはもう忘れたくないと感じている。
川村は飲むピッチが早いわりにそれほど強くないのか、頬は赤く目付きがトロンとしている。
「俺さあ、前から誘いたかったんだよね、保高くんのこと。でも、いつも傍に柊崎くんがぴったりくっついてるから、なかなかチャンスがなくてさ。今夜はラッキーだったなあ」
眞昼は作り笑いをするしかなかった。
「ぴったりって……。そりゃ、柊崎さんは、俺の教育係ですから」
「教育係……ねえ」
川村は意味ありげにニヤニヤしている。
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