136人が本棚に入れています
本棚に追加
眞昼の勢いに押されつつ、川村はビールとレモンサワーを注文した。
ったく、アンタにあいつの何がわかんだよ。いろいろテキトーなアンタに、柊崎の何が……
「生中、レモンサワー、おまたせしました」
目の前に泡立つジョッキとグラスが置かれた。
「お、きたきた。さ、改めて乾杯しようか」
眞昼にジョッキを差し出す川村の表情は、優しげだった。眞昼は、川村をじっと見つめた。そしてジョッキに視線を移した。
アルコールのせいで、焦点がなかなか合わない気がする。
「ん? 保高くん?」
――いや、俺よりこの人のほうが、柊崎との付き合いは長いのか……
自分は元同級生だけれど、当時の記憶は断片的だし、まだまだ忘れていることが多い。晃夜と一緒にいれば思い出すだろうけど、現時点では川村に負けている。
「俺、川村さんには負けませんから。――すいません、やっぱりこっち貰います」
眞昼はジョッキではなく、グラスに手を伸ばした。
「保高くん、なんか誤解してるようだけど」
「あ、サワー飲みたかったですか?」
眞昼がサワーのグラスを戻そうとすると、川村の手はそれを押し戻した。
「いや、それはいいんだけど。――ねえ、俺は保高くんに興味があるって言ったんだよ。柊崎くんじゃなくて君に。仕事とか、先輩後輩とか関係なく、恋愛の話だよ」
「恋愛?」
「あ、やっぱり伝わってなかった? 軽い調子で言ったの失敗したな……」
意識はしっかりしているものの、アルコールに浸かった頭は思うように回ってくれなかった。
最初のコメントを投稿しよう!