136人が本棚に入れています
本棚に追加
え、なにやってんの、俺。
「あっ、ご、ごめん」
晃夜も驚いたのかポカンとした表情になる。自分の反応に、眞昼自身驚いていた。
「やっぱり痛むのか?」
「いやっ、全然、ちょっとびっくりしちゃって。……平気だから、心配かけてごめん。あの、整形外科、川村主任に聞いて行ってくるから」
「なるべく早めに行けよ。経理に湿布剤置いてるから、貰ってとりあえず貼っとくといい」
「そうする。……ありがと」
薄い笑顔を浮かべ、晃夜は自分のデスクへ戻っていく。眞昼は泣きたい気持ちになりながら、経理課へ急いだ。
経理課で、女子社員に湿布剤を貰う。その隣の席では、もう一人の兄候補である山下が電話中だった。背が高くひょろりとした体形の川村とは対照的に、ややぽっちゃり体形の山下。
その姿を横目で確認しながら、自分の頭の中は、もはや他の事でいっぱいなのだと実感した。
オフィスへ戻ると、つい晃夜の姿を目で追ってしまう自分がいる。真剣な表情で書類に目を通している横顔を見て、頭を掻き毟りたい衝動にかられるが、ぐっと抑えた。
柊崎は心配してくれてるのに、あんな、避けるような態度とっちゃうなんて。バカだろ、俺。
頻繁に席替えをするこの職場では、数日前まで眞昼のデスクは晃夜の隣だった。けれど、現在は川村の隣へ異動している。
そのおかげで、自分の中に登場したややこしい感情に、振り回されず職務に集中できるのはありがたいのだが。
「保高くん、夕べ無事に帰れたの? 俺が送ろうとしたら、「大丈夫です」の一点張りだったから、心配したぞ~」
最初のコメントを投稿しよう!