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「あ、川村さん、おはようございます。すいませんでした、ご迷惑おかけして」
川村は満面の笑みを返してきた。
「いやいや、まじで気にしないで。元はといえば、俺が保高くんに変なこと言ったのが原因だしー」
「ちょっ、川村さん! ……声が大きいです」
晃夜には、夕べの内容は知られたくなかった。眞昼はそっと晃夜のデスクへ視線を向ける。晃夜の視線は書類に注がれたままだ。
ほっと胸を撫で下ろすが、同時に、先ほど晃夜に不自然な態度をとってしまったのをリアルに思い出し、後悔の念にかられた。晃夜の強張った表情が、目の奥に焼きついている。
あんな反応したら、あいつ、俺に拒否られたって感じたかも。そんなことないのに、逆なのに。……柊崎が好きなのに、あんな態度とって、俺……。
自分の中に、するりと出現した言葉だった。
――柊崎が……好き?
はっとして、川村を凝視する。夕べ、『柊崎くんが好きなんでしょ』と指摘されたばかりだった。その台詞に驚き、椅子から転げ落ちた。自分の晃夜に対する態度は、そんなにわかりやすいのだろうか。それとも、川村が鋭いのか。
「どうしたの保高くん、君にじっと見られるのは嬉しいけど、動きが止まってるよ。それとも、昨日の返事考え中?」
「いえ、川村さんにはまったく関係のないことです」
「えっ、そこは冗談でも肯定してほしいな~」
イージーモードの川村を無視し、眞昼は背筋を伸ばした。テキパキと書類や資料をまとめて、鞄の中に入れる。
「あ、そうだ川村さん」
「ん、なに?」
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