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「すいません、近くの整形外科教えてください」
「あ、そうか、地図出すね」
川村は手早く、携帯の画面に出してくれた。晃夜が言う通り、すぐ近所だった。徒歩二、三分で行けそうだ。
「今日のアポは午後一番だから慌てなくていいよ。しっかり診てもらいなよ。昼に食い込むようなら、途中で落ち合おう」
「はい。待たされるようなら連絡入れますから」
仕事の約束に遅れることはできないし、失敗もできない。晃夜と一緒に仕事を続けていくなら、今はそのことに集中するしかない。
眞昼は半分だらけている川村にキリッと声をかけた。川村は拍子抜けしたように、ぬるい視線を眞昼に向けた。
「……なんか熱いねえ、保高くん。キャラ違うんじゃないの?」
「そんなことないですよ」
俺は適当が好きだなー、という川村の声を背中で聞く。「じゃ、行ってきます」と周囲に声を掛けながら出て行くとき、眞昼は、晃夜に見られていることに気づかなかった。
整形外科では、手首をしっかり固定するよう指示されて、包帯の巻き方を教わった。次はテーピングに変えるため、数日後に再び受診する予定だ。
患部を冷やしたことは正解らしい。職場の先輩の指示で冷やしたと伝えると、初老の医師は褒めてくれた。念のため痛み止めも処方してもらう。
クライアントとの約束の時間には充分間に合い、打ち合わせは滞りなく進んだ。普段は適当な川村も、仕事はきちんとこなしてくれる。(当たり前だが)彼とのコンビもいくらか慣れてきていた。
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