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いてもたってもいられなくて、眞昼は財布と携帯だけ持って外へ飛び出した。直接話したくて、晃夜の番号を画面に表示した。
「おーい、どこ行くんだよ、スーツのままで」
「えっ」
声の方向へ顔を上げると、通路の先に晃夜が立っていた。
うそ、なんで?
ダンガリーのシャツにチノパン姿。とっくに帰宅していたということだろうか。ラフな服装で共用廊下の電灯の下に立つ晃夜は、光が当たったように輝いて見えた。ゴシゴシ目をあきれた擦っても、それは変わらなかった。
「まったく……なにやってんだよ、おまえは」
おかしな行動の眞昼を、晃夜は脱力した様子で見た。眞昼は会えたことが嬉しくて、泣きそうになって俯く。
「どうした?」
その様子にいち早く気付いたのか、晃夜は大またで近づき、眞昼の顔をのぞき込んだ。眞昼がのろのろと顔を上げると、肩に手を伸ばしかける。けれど、晃夜の手は眞昼に触れることはなかった。
今朝の自分の行動のせいなのだが、晃夜の態度に、胸がぎゅっとつまった。
「なんでもないよ。ただ、柊崎と話したくて……」
やっぱり、声に出すと恥ずかしいな!
眞昼がもじもじしていると、晃夜は「俺んち来るか?」言い、背を向けて歩き出した。
「えっ」
「どうせ、目と鼻の先だしな」
晃夜が指差したのは、通路の奥、眞昼の部屋から三件先の、角部屋だった。
「へ? おまえんちここ? え? ――こんな近くだったの!」
眞昼は衝撃を受けながらもその背中についていく。
「おまえ、全然気づいてなかっただろ」
振り向きざまに、にやりと笑われた。
――まじか……。
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