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「柊崎! お前! 俺が気づかないのをいいことに、わざと内緒にしてたな!」
笑いをかみ殺しながら晃夜は鍵を開ける。眞昼は、晃夜の祖母の存在を思い出しぱっと口を塞いだ。
「くう……」
「まあでも、これだけ親しくなったら、どこに住んでるのかぐらいは訊くよな普通。なのに、保高くんは俺になーんにも訊いてくれなかったよなあ」
「う、それ、は……」
尤も至極な意見なので反論できず、眞昼はがくっとうな垂れた。
決して晃夜に興味がなかったわけではない。彼と一緒にいると自然に会話が弾み、途切れることがなかったから、充分に満足していたのだ。
眞昼は、晃夜の背中を見つめた。
そうだ。晃夜と話すのは本当に楽しい。高校を卒業して依頼、頻繁に同年代の友達との付き合いが疎遠になっていた眞昼にとって、晃夜の隣は居心地がよかった。表面上は口は悪いが、心根は優しい。
一緒にいると時間を忘れてしまうほど、自分が生き生きしているのを感じていた。
「入って」
玄関の広さは、眞昼の部屋の十倍はありそうだ。1DKの眞昼の単身タイプの部屋とファミリータイプでは、比べようがないけれど。
「おじゃましまーす……」
――にしても、いきなり広いリビングで、(しかも窓前面が円形にカーブしている)眞昼の部屋が五つくらい収まりそうだ。この感じは、母の新居といい勝負である。
「俺の部屋、こっち」
晃夜は左のドアを指差す。その上の壁掛け時計を見ると、八時半だった。
「あの、おばあさんは?」
「反対側の奥の部屋にいる。もう眠ってるかも」
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