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ややふて腐れるように呟く晃夜は、少しだけ子供っぽく見えた。このままいつまでも二人で、一緒に過ごせたらいいのにと思った。
眞昼は、二十センチ離れて座る晃夜の手に触れたくなるのをぐっと堪えた。以前なら、ポンポン言いたいことが浮かんできたのに、自分の気持ちが邪魔をして言葉が出てこない。
晃夜が、どうした? という風に眉毛を寄せる。
「保高おまえ、やっぱり変だぞ」
眞昼は降参して、本音を織り交ぜて言った。
「だってさ、毎日会ってた柊崎に会えなかったから……なんか、ヘコんでたっつーか」
晃夜の目が見開かれた。眞昼は慌てて次の言葉を探した。
「ま、でも気弱なこと言ってられないよな。俺も仕事がんばらないと。出張から帰って新人研修期間も終えたら、また一緒に仕事できるんだろ?」
「うん。俺が研修全期間担当するわけじゃないから、意外と早いかもしれないな」
「そっか」
遠くへ行ってしまう晃夜に、想いは伝えられないけれど、せめて、晃夜が大切な存在だということは伝えたい。眞昼は、親しい友人、同僚として言える言葉を探した。
「少し前に俺の部屋で言ったじゃん? 柊崎と一緒にいるのが凄く楽しいってさ。――たとえこんな風に会えなくても、離れても、それは変わらないよ」
晃夜は、少し考えるような仕草のあと、体を眞昼の方へ向けた。
「離れても?」
「うん」
「それ、どういう意味?」
あれ? 言い方が変だったかなと、うろたえる。でも、確信を突いた内容は避けたかった。
「お前まさか、前の職場へ戻るつもりじゃないだろうな」
「へっ」
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