2 既視感

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 背格好は同じくらいだが、ただの一般人とはかけ離れたレベルの容姿だ。笑みを浮かべているが同年代の親しみやすさはなく、凛とした独特の近寄りがたい雰囲気がある。  男性は柔らかな笑みを消し、真顔になった後小さく何か呟き、考えるような仕草をした。 「責任者の方に直接お会いしたいので、また夜に出直します。お仕事中失礼いたしました」 「あ、はい。……すみません、お願いします」  顔にこそ出さなかったつもりだが、男性に、自分では頼りないと控えめに指摘されたような気分だった。  同年代で、しかもひょっとしたら同級生かもしれないと感じただけに軽く落胆した。    眞昼はただのアルバイト店員だが、オーナーの指名で他のアルバイト店員を統括するリーダーを任されていて、一応は責任者だ。  確かに、見た目もそうなのだろう。アルバイトの高校生や大学生には「一見地味だけどよく見ると可愛い」と、特に女の子たちによく言われる。  一重のわりに大きい目と長いまつ毛。ぽってりした小ぶりの唇。母の特徴をそのまま受け継いだ顔立ち。    キャラ的にぼんやりしているから、遠目や第一印象だと平凡に見えるらしい。だから近くで顔を見た人間は皆、口を揃えて「顔小さい」だの「アイドル顔」だの言って勝手に驚く。  ――でも、俺じゃダメってことだよな。そりゃそうか……  普段は考えないようにしていることだが、こんな時、自分がいかにちっぽけで薄っぺらな存在なのか思い知らされる。  
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