10 距離

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10 距離

 晃夜がインドネシアへ飛び立って、一週間が過ぎた。仕事の邪魔にならない程度の短い文面で、眞昼はメールを毎日送っている。晃夜も、必ず返信してくれるから、そのたびホッとしていた。  出発前の晩の、別れ際の晃夜の様子が気になっていた。  眞昼がオーナー夫妻への素直な思いを伝えた直後、深刻な表情で晃夜は黙り込んでしまったからだ。彼にとって、オーナー夫妻はそこまで印象が悪いのだろうか。それとも、まだ何か誤解があるのだろうか。  このところ、晃夜とすれ違いが続いたり、自分の感情に邪魔されたりで、晃夜との会話が格段に減っていたせいもある。  晃夜が日本にいないという事実は、眞昼にダメージを与えていた。常に落ち着かずソワソワして、とても大切なものを忘れている感覚が、常に付きまとう。  一方川村との仕事は順調で、この日はほぼデスクワークだった。休憩を入れずに没頭してしまったため、疲労が目の奥まで達している。一息入れようと席を立ったとき、珍しく晃夜以外のメールが届いているのに気づいた。  毎年律儀に年賀状を寄越す中学の同級生だった。スマホに変更したとき、アドレスも変えたので、彼には連絡のメールを送っていたのだ。 <新しい仕事は慣れてきた頃かー? 柊崎と同じ職場だって言ってたよな。この前久しぶりに元担任に会ったんだけど、お前らのことよく覚えてたぞ。まあ、特に柊崎は目立ってて、モテモテだったしな。あいつ一年間しかいなかったのにすげえよな。今度三人で飲もうって柊崎にも伝えといてくれ>  友人の、明るくほのぼのした性格が伝わってくるような文面だった。
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