136人が本棚に入れています
本棚に追加
改めて母の顔を見ると、「待ちくたびれた」というのが顔に書いてあるような気がする。しかし眞昼には、その理由がわからなかった。
「もっと早く会いに来ると思ってたのに、何をぐずぐずしてたのよ。晃夜は今、海外なんでしょ?」
「そうだけど」
晃夜を呼び捨てにするあたり、既に息子扱いなのだろうか。相手は自分の母親なのに、晃夜を取られたような妙な気分だった。
「もっと早くって、どういうこと? さっぱり意味わかんないんだけど。俺はただ、柊崎の中学時代の話が訊きたくて社長に会いにきたんだよ」
母はフェミニンなスタイルに似合わず、腕を組んで仁王立ちした。
「晃夜からは何も聞いてないの? まさかあんた――自力で思い出したの?」
「あのさ、話が全然見えないんだけど、で、社長には会わせてもらえるのかよ」
「……もうじき帰ってくるけど。やだ、早とちり? もしかしてややこしい状況?」
母はブツブツ言っている。
「なんなんだよさっきから、わかるように説明してくれよ」
「えーと……」
玄関からバタバタと足音が響き、人の気配が近づいてきた。社長が帰宅したようだ。晃夜の父親である社長との初めての対面に、眞昼は背筋を強張らせて待ち構えた。
リビングに飛び込むように入ってきた社長は、想像と違い、驚くほど若かった。
「会いたかったよ! 眞昼~!」
「へっ?」
いきなりガバッと抱きつかれ、ぎゅうぎゅう抱き締められた。かと思ったら、ぐいと体を離され、顔を両手で包まれた。
「わっ」
「本物の眞昼だ! 大きくなったなあ~」
「あ、あの」
最初のコメントを投稿しよう!