10 距離

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 改めて母の顔を見ると、「待ちくたびれた」というのが顔に書いてあるような気がする。しかし眞昼には、その理由がわからなかった。 「もっと早く会いに来ると思ってたのに、何をぐずぐずしてたのよ。晃夜は今、海外なんでしょ?」 「そうだけど」  晃夜を呼び捨てにするあたり、既に息子扱いなのだろうか。相手は自分の母親なのに、晃夜を取られたような妙な気分だった。 「もっと早くって、どういうこと? さっぱり意味わかんないんだけど。俺はただ、柊崎の中学時代の話が訊きたくて社長に会いにきたんだよ」  母はフェミニンなスタイルに似合わず、腕を組んで仁王立ちした。 「晃夜からは何も聞いてないの? まさかあんた――自力で思い出したの?」 「あのさ、話が全然見えないんだけど、で、社長には会わせてもらえるのかよ」 「……もうじき帰ってくるけど。やだ、早とちり? もしかしてややこしい状況?」  母はブツブツ言っている。 「なんなんだよさっきから、わかるように説明してくれよ」 「えーと……」  玄関からバタバタと足音が響き、人の気配が近づいてきた。社長が帰宅したようだ。晃夜の父親である社長との初めての対面に、眞昼は背筋を強張らせて待ち構えた。  リビングに飛び込むように入ってきた社長は、想像と違い、驚くほど若かった。 「会いたかったよ! 眞昼~!」 「へっ?」  いきなりガバッと抱きつかれ、ぎゅうぎゅう抱き締められた。かと思ったら、ぐいと体を離され、顔を両手で包まれた。 「わっ」 「本物の眞昼だ! 大きくなったなあ~」 「あ、あの」
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