11 俺たちの過去

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 晃夜と再会した時に感じた既視感や懐かしさは、単に元同級生だからではなく、潜在意識から生じたものではなかったか。そして、紳士服店員の「体型がよく似ている」という指摘もそうだ。 「あの、柊崎は、あいつは、俺の……」 「うん。君たちは、二卵性の双子で、晃夜は――君の弟だよ」 「弟? 兄ちゃんじゃなくて?」  社長は、晃夜そっくりの顔で頬笑んだ。 「君は、ずっと兄さんがいると思ってたみたいだね。でもそれはきっと、僕の事を「お兄ちゃん」と呼んでいたからだと思う。それに、君たちが四歳の頃、僕は父の秘書をしていたから、大学との両立で忙しくて、なかなか会いに行けない日もあった。でも、君の隣にはいつも晃夜がいたんだ。毎晩香帆さんに電話すると、必ず手を繋いで眠ってるって言ってたっけ」  眞昼は、自分の瞼が限界まで見開かれるのを感じた。  ――柊崎だったんだ。あの温かくて安心する手は……柊崎の手だったんだ。 「君たちは、僕がやきもち焼くくらい仲良しで、いつも、何をするのも一緒だったよ。でも、僕のせいで父が君たちを引き離したんだ。本当に、申し訳なく思っているよ。僕は晃夜が、どんなに君を好きで大切に思ってるか、誰よりも知っていたから」 「柊崎が……」 「君たちの名前に昼と夜が入ってるのは、香帆さんの提案なんだ。僕の名前には、朝の漢字が入っているから」  眞昼はあっ、と思った。確かに、社長の名前は柊崎朝来(ともき)だった。  俺の名前、社長と柊崎の間に入るんだ。柊崎と一緒に考えてもらってたなんて……嘘みたいだ。
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