11 俺たちの過去

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 社長の名前を知ったとき、その漢字を目にしていたはずなのに、まさか自分と晃夜、その社長と濃い繋がりがあるなんて、誰が想像できただろうか。  なんだか現実感がなくて、眞昼は細くため息をついた。晃夜そっくりの社長が手を握ってくれているから安心感はある。けれど、やっぱり自分が一番求めているのは晃夜の手なのだと嫌というほど実感していた。  突如、けたたましい音が玄関から響き、バタバタと足音が近づいてきた。 「あら、予想より早い到着だこと」 「えー、もう? 早くない?」  母がぼそりと呟き、社長も口を尖らせた。 「保高!」  リビングのドアが乱暴に開いて飛び込んで来たのは、晃夜だった。 「柊崎……」  晃夜は、眞昼の顔を見てホッとした表情になるが、眞昼と社長の手が繋がれているのを見て、社長に摑みかかった。 「なに馴れ馴れしく手を握ってんだよ、クソ親父! 離れろ!」  大事な物を取り返すように、晃夜は眞昼の体を自分の方へ引き寄せた。その行為に、眞昼の胸がキュンと甘く疼いた。 「いいじゃん、久々の親子対面なんだから~。晃くんばっかりずるいよ、眞昼を独り占めしてさー」  ――晃くん? 「うるせえ、てめえは香帆さんといちゃついてりゃいいだろ」 「お、おい……」  社長に対する晃夜の、口の悪さに面食らう。  しかし息子に冷たい言葉を投げられたというのに、社長は母の顔を見てヘラッと笑った。母は呆れ顔で肩をすくめた。  本当に、性格はどこも似ていない親子なのだと思った。  一見クールな晃夜は、性格は母親似ということだろうか。でも、中身はどこまでも優しい男だと自分は知っている。
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