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眞昼は、父を睨みつける晃夜の横顔を見つめた。
本当に柊崎が帰ってきたんだ……。
「柊崎、おかえり」
はっとしたように、晃夜が眞昼を見た。柔らかな表情の中に、微かに緊張が伝わってくる。それは眞昼も同じだった。
「ただいま」
晃夜は眞昼の腕をしっかり摑むと、社長に向き直った。
「続きはちゃんと話すから、俺にまかせてくれないか」
「いいけど? そもそも、自分が話すから黙ってろって言ったの晃くんだしね」
「ああ」
「――頼んだよ」
「わかってる」
晃夜の横顔は、覚悟を決めたように社長を見据えた。
柊崎、俺に打ち明けてくれようとしていたのか……。眞昼はただ晃夜といつものように話がしたいと思っていたけれど、晃夜もまた、眞昼と話す機会を捜していたようだ。
帰国後に話すつもりだったのだろうか。あるいは、眞昼が社長に会いに行ったから、予定が狂ってしまったんだろうか。
「保高、帰ろう」
「あ、うん」
ちらと社長の顔を窺うと、ちゃっかり母の肩を抱いてにっこり微笑んでいた。
「眞昼、次会うときはちゃんとパパって呼んでね」
「あっ……はい」
眞昼は晃夜に腕を引っ張られながら、振り向いて社長に頭を下げた。
共用廊下へ出てからも、晃夜はぐいぐい眞昼を引っ張っていく。
「柊崎、いくら父親でも社長にあんな態度でいいのかよ」
「いいんだよ。仕事以外はへタレの親父だ」
晃夜が突然立ち止まり、その反動で、眞昼はその背中に顔ごとぶつかった。
「ふぐっ。――おい、急に立ち止まるなよ」
鼻を押さえる眞昼を、晃夜はジロリと睨んだ。
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